精神保健福祉士の実習 指導者が必要なもの5 細かい考え、コメント


 実習指導において指導者側が気にする方法を書きました。①計画の策定と②実習生自身の波長合わせです。更にPSWとして活動する場合において、その職務は何たるか、どのような考えを持ったほうが良いのか、加えてコメントをする場合における注意もここでは書いています。


利用者さんは人あっての精神疾患


 長年精神障害を患っているお客さんを見ていると目が曇るのかわかりませんが指導者は利用者さんが病人である前に人間であることを考える必要があります。

 そしてなぜ、誰のため、何のため自分は仕事をしているのか実習中、そして実習後、更には働いてからでも少なくとも一度は深くじっくりと考える必要があるのかもしれません。

 それを実習生とわかちあい、ともに考える機会も私は指導者の実習において必要になると考えています。


こられた実習生は何回目の実習か


 そうしたことをあらかじめ理解したうえで指導の一部分、実習というものを考えてみます。最近の実習は、病院と地域での二箇所でなされています。
 ですので実習にこられた実習生がそれぞれ何回目の実習で来たかによって指導するポイントが異なるのだと思っています。それぞれ具体的には
  • 一回目の実習ならば二回目の実習に活かせられるように支援する。
  • 二回目の実習ならば一回目の実習を思い出す。
ことが望まれるように思います。



実習生との接し方


 マネジメントでも記したので繰り返しになりますが、事前訪問を通して施設側のバイザーとの関係を作ります。その際、必要となることは、①計画のすり合わせ(前々回で紹介)と②実習生と施設との波長合わせです。

 施設側と養成校側との計画をすり合わせる段階においては計画が施設側、養成校側とで異なった場合、通常どちらかが折れねばなりませんが、どちらかと言うと養成校側が折れるのが正しい気がします。なぜなら実習先は養成校の体験の場ではなく、本当の支援の現場だからです。

 また波長合わせの段階において「NOと言えない人をNOと言わせるようやさしく接する。実習生を丁寧に扱う」のが重要(これを「甘やかす」と表現します。)と言われますが、私はそれは実習生が自立してもらう意味でも利用者が自立してもらう意味でもそれが必ずしも正しいとは言えないと思います。

 なぜ実習生を甘やかさないかというと、資格をとったら基本的には指導者と同じ一人前のPSWとして活動するわけで、お客さんは甘やかされて育ったPSWも熾烈な環境で育ったPSWも選べず同等に扱われる、即ちお客さんに対して支援の質が担保しきれないからです。

 また実習において手取り足取り甘やかされて育ったPSWが、利用者さんの自立を支援する事ができるとは考えにくい、私はできないと考えています。

 ですから常に教えてもらえないと何もできない、自ら学ぶつもりも全くないと考えられる方はPSWになるのではなく、ひょっとしたら普通の会社員になって組織の歯車になったほうが良いのかも、とも思います。


そもそもPSWの専門性とは


 そもそも私はPSWの専門性を考えてみますと①よくわからない気持ちや状況を受け入れ、言語化・分化する。②サービスやその他を当てはめたり、作り出したりし臨機応変に対応する。つまり①問題を見つけ②対処することであると考えています。

 これは言い換えればプレーヤーと管理者との両面の側面を持っていて、日々改善、日々成長することをよしと考えています。
 そのような意味では、はじめにプレーヤーになりたいのか、あるいは管理者になりたいのかを実習の際に実習生に改めて問う必要もでてくると思っています。
 その際、実習生がプレーヤー、管理者のどちらを選択しても構いませんが、遠くの目標は遠くの目標として持ってもらい、まずはケース研究という特別な事例から一般的な解を取り出すためとりあえず、できることをしてもらうのが望ましいです。

 ですから仕事の全てを知るのは後でいいと考えています。もしくは一生知る必要もないかもしれません。それでもいいです。限られた環境においてPSWの役割を知り、またPSWの所属する組織にも限界を知る。更に実習中実習後に他の場で他の人が何をしているのかを問うことから逆説的に自らのできることを考えてもらうことも必要です。


目的達成手段としての実習生のコメント


 そうした意味では上記専門性を事前に考えた上で、実習生にどうなってもらいたいかであったり、あるいは何を持ってゴールとするかを考える必要があります。そしてその目的を達成をするために、あくまで手段としてそれぞれの実習生に合った指導者コメントをつけることが望ましいです。

 例えばちょっとしたことでもすぐへこんでしまう実習生に対し、きつい文言を書いても受け取ってもらえない可能性があります。あるいは逆にやる気があるのにもかわららず浅いかかわりの文言を書いても今度は逆に舐められてしまいます。また実習生の記した内容に対して単に否定するだけで無く指導者としてどのような見方を有していたほうがよいかであったり、あるいは行動に対しては具体的な内容を書くことが望ましい(※)かもしれません。

※具体的な行動の例として:「あれもないこれもない→このような部分がある。」「だらだらしない→次はどんな行動がされるか予測する。」「行動が支離滅裂でてんでばらばら→優先順位をつける。」など

 ですからいうなれば指導者は実習生さんも利用者さんと同じように観察します。そして相手がどういう価値観があるか、そこから何を学んだか、といったことをそれぞれ考えながらコメントする必要があるように思います。


改めてPSWという価値観


 最初に戻るとこれは、できることから誰の何を支援するのか、ということです。つまりもう一度PSWやソーシャルワーカーとしての「生き方」をじっくり考える必要がでてくるのだと思われます。 たとえば利用者さんが生活者としてどう生きるのか、利用者さんが職業として何がしたいか、家族は・・・?など。

 PSWとして活動する際には患者や利用者さんの人生を考えることは勿論必要なことですが、ひょっとするとそれ以上に実習指導をすることで実習生、指導者ともに自分の人生をも考える必要ありそうな気がしています。

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